新型コロナ感染に配慮した誘導歩行体験

南アフリカ歩行協会の注意事項にあった誘導方法を、簡単に試してみました。今回は、一本の平たい棒の両端を、支援者役と視覚障害者役の2人が片側ずつ握って歩いてみました。

COVID19 Coronavirus O and M Update 22 March 2020
SAFETY PRECAUTIONS RELATED TO BASIC SIGHTED GUIDE SKILLS REGARDING THE COVID-19 VIRUS [ PDF ]

これにはいくつかの理由があります。

南アフリカ歩行協会の注意事項には、折りたたみ式の白杖の両端を支援者と視覚障害者がそれぞれ握るとありました。しかし、白杖は路面を探ったり、いろいろなものを手で触れる代わりに白杖で触れるなど、清潔なものとはいえません。

また、支援者と視覚障害者の上腕に、それぞれベルトを巻きつける方法は、支援者が歩行を停止したり左右どちらかに曲がった時、視覚障害者が気づきにくいかもしれません。もしかすると、支援者が停止しても視覚障害者はすぐに止まれないかもしれませんし、支援者が左に曲がっても視覚障害者は直進してしまうかもしれません。

--

下の左側は「誘導の基本姿勢」の写真、中央は30 cmの一本の平らな棒の端を支援者役と視覚障害者役が片側ずつ握って立った写真、右には50 cmの平らな棒を握って立った写真を示しました。30 cmの棒はいつもの基本姿勢よりは支援者役と視覚障害者役との距離を得ることはできますが、もう少し離れたい気もします。50 cmの平たい棒を使っても、国立感染症研究所が示す濃厚接触者の定義を十分に満たす距離を保つことができません。しかし、これ以上に離れると棒がとても長くなり、周囲の人との接触もあり得るかもしれません。そこで50 cmの棒を試すことにしました。


実際に体験してみた感想です。

支援者役と視覚障害者役の2人が握る棒の長さを50 cmとしました。たったこれだけの長さですが、視覚障害者役を体験した時、支援者役と一緒に歩いている感覚がとても少なく不安でした。いつもよりもゆっくり歩いて、危険に備える必要があると感じました。

平坦な道で実施すべき方法だと思いました。小さな段差がある場合には、必ず立ち止まって視覚障害者に確認してもらう必要があると思います。階段では、視覚障害者に1人で昇降してもらう必要があると思います。

左右に角を曲がる時、滑らかな軌跡で誘導されると方向が変わったのがわかりにくく感じました。支援者には極端に方向を変えてもらった方が、棒から伝わる動きがわかりやすくなるのではないかと思われます。

停止や方向を変える時には、こまめな声かけをいつもの基本姿勢以上に行うことが必要だとも感じました。

ここまでのことはこの方法に慣れるまで、危険のない平坦な道でじっくりと練習する必要性があると思いました。

また、支援者に多くを任せて歩くのではなく、視覚障害者自身も自主的な安全確保をしながらでないと実施できない誘導方法だと思います。今回の誘導方法の場合、白杖をただ持って歩くだけでは不十分です。下の写真に示したように、白杖を短く持って足元を探りながら歩く(Short Cane Technique)ことも必要だと感じました。白杖を使って歩くことに慣れている視覚障害者ほど、実施しやすい方法であるかもしれません。


今回体験した方法は感染対策として完璧ではありません。お互いの距離は不十分、視覚障害者にある程度の白杖を使った一人歩きの経験も要求されるかもしれない、もしかすると階段では手すりを握る必要がある、何より不安を多く感じる誘導方法です。新型コロナウィルス感染への不安は、いつまで続くかわかりません。感染に配慮した誘導方法について、みんなで知恵を出し合って検討、また改良を続けなければならないと思います。